外国人社員を受け入れている企業にとって、「在留資格」に関する手続きは避けて通れない業務のひとつです。採用時の在留資格認定、更新や変更の申請など、対応する場面は年々増えています。
これまでは入管窓口での手続きが主流でしたが、近年ではオンライン申請が普及しつつあります。とはいえ、「制度の概要がよく分からない」「どうやって使い始めたらいいの?」と感じている企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、在留資格オンライン申請の利用方法を中心に、制度の基本から導入時の注意点、実務で活用する際のポイントまでを、わかりやすく解説します。これからオンライン申請の導入を検討したい企業の方は、ぜひ参考にしてみてください。
在留資格のオンライン申請とは?
外国人社員の採用や更新手続きに関わる中で、「もっとスムーズに申請ができれば…」と感じたことはありませんか?
これまで入管への窓口申請が主流だった在留資格関連手続きですが、現在はオンライン申請制度が導入され、企業でも利用が進んでいます。ここでは、制度の背景とそのメリットについて詳しく見ていきましょう。
オンライン申請が導入された背景
従来、在留資格の手続きはすべて入管窓口での対面申請が必要でした。しかし外国人労働者の増加により、申請件数は年々増加。企業側の負担も大きくなる中、手続きの効率化と簡素化が強く求められるようになりました。
また、政府のデジタル化推進政策(いわゆる「デジタル庁」創設以降の方針)により、行政手続きのオンライン化が加速。在留資格に関しても、2020年より一部申請手続きがオンライン対応となり、2022年には企業・本人・行政書士いずれの立場でも利用できる環境が整ってきました。
さらに、マイナンバーカードの普及や在宅勤務の拡大など、社会全体のデジタル環境が整ってきたことも制度普及を後押ししています。
オンライン申請のメリット
オンライン申請制度には、従来の窓口申請にはない複数の利点があります。時間・コストの削減に加え、今後の制度改修によってさらなる利便性の向上も期待されています。ここでは、企業が特に注目すべき主なメリットを項目ごとに整理します。
時間と場所に縛られない柔軟な申請が可能
オンライン申請は、24時間365日、自宅やオフィスから手続きが可能です。入管窓口の混雑や待ち時間を避けられるため、担当者や外国人本人の時間的負担を大幅に軽減できます。
進捗確認と入力ミスの防止機能で業務効率が向上
申請の審査状況はシステム上でリアルタイムに確認でき、社内での進捗共有や対応がしやすくなります。また、パスポート番号の照合など入力チェック機能が搭載されており、申請後の差し戻しリスクも低減されます。
費用の削減と申請手数料の優遇
オンライン申請では、窓口への移動に伴う交通費や担当者の拘束時間を削減できるほか、2025年4月以降は手数料の優遇措置が適用され、在留資格変更・更新など一部手続きでは窓口申請よりも500円安価に設定されます。
在留カードの郵送受け取りが可能
原則として、審査結果が承認されると在留カード等は郵送で受け取ることが可能です(※例外的に窓口受領となるケースもあります)。これにより、手続き完了まで一度も入管に出向く必要がないケースも生まれます。
オンライン申請で対応できる手続きと対象者
オンライン申請制度は、すべての在留資格関連手続きに対応しているわけではありません。まずは、オンラインで申請できる手続きの種類を把握し、自社が対応したい内容が制度の対象かどうかを確認することが重要です。
また、オンライン申請は誰でも自由に行えるものではなく、申請者の立場によって利用方法や要件が異なります。ここでは、対応可能な手続きと、申請できる対象者について解説します。
オンラインで対応できる手続き
現在、オンラインで申請できる在留資格関連手続きは以下の7種類に限定されています。企業が関わる採用・更新・証明発行などの主要な申請の多くは対象となっており、現場でも徐々に活用が進んでいます。
| 手続き名 | 概要 |
|---|---|
| 在留資格認定証明書交付申請 | 海外在住の外国人を日本に呼び寄せ、就労・在留を認めるための事前審査手続き。 |
| 在留資格変更許可申請 | 現在の在留資格とは異なる目的(例:留学→就労)での在留を希望する場合に必要な手続き。 |
| 在留期間更新許可申請 | 現在保持している在留資格のまま、滞在期間を延長するための申請。 |
| 在留資格取得許可申請 | 日本国内で出生した外国人や、新たに資格を取得する必要がある場合に行う申請。 |
| 就労資格証明書交付申請 | 転職や配置転換の際に、従事する業務が在留資格に適合していることを証明するための書類を取得する手続き。 |
| 再入国許可申請 | 一時的に出国し、同じ在留資格で再び日本に戻るために必要な再入国許可を取得する申請。 |
| 資格外活動許可申請 | 本来の在留目的以外の活動(例:留学生のアルバイト)を行う際に必要な許可を得る手続き。 |
なお、「外交」「短期滞在」「特定活動(出国準備期間など一部)」は対象外とされており、これらに該当する申請はオンラインでは行えません。
オンライン申請ができる対象者
オンライン申請は、申請する人の立場によって利用要件が異なります。企業で外国人の在留資格手続きを行う場合、所定の準備と登録を経て初めて利用が可能になります。
| 申請者区分 | 要件・特徴 |
|---|---|
| 外国人本人・法定代理人 | マイナンバーカードおよび署名用電子証明書を保有している場合に限り、本人による申請が可能 |
| 所属機関(企業・学校等)の職員 | 外国人本人からの依頼に基づき代理申請が可能。所属機関としての事前の「利用申出」登録が必要 |
| 行政書士・弁護士(申請取次者) | 出入国在留管理庁に届け出済みで、オンライン申請に対応したIDを保有している専門家 |
| 親族(特定条件下) | 申請人が16歳未満など、例外的な事情がある場合に限り、親族による代理申請が認められることがある |
このように、対応可能な手続きと利用者の条件を正しく理解することで、制度を有効に活用し、自社の外国人雇用における手続きをスムーズに進めることができます。
オンライン申請の流れと準備
オンライン申請を行うには、事前の環境整備とシステム利用に関する基本的な理解が必要です。ここでは、所属機関としての利用申出の流れと、申請の具体的なステップを解説します。
所属機関として利用申出を行う
企業がオンライン申請を行うには、アカウントを作成する前に、まず「所属機関」としての登録が必要です。登録には所定の書類を提出し、出入国在留管理庁からの承認を得ることで初めて申請が可能となります。
利用申出の流れ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① 必要書類の準備 | 登録申請書、誓約書、会社情報に関する書類(例:登記簿謄本など)を用意する |
| ② 書類の提出 | 管轄の地方出入国在留管理局に郵送または持参して提出する |
| ③ 審査の実施 | 提出後、通常1~2週間程度で審査が行われる(混雑状況により前後あり) |
| ④ 利用者IDの発行 | 審査を通過すると、企業専用の「利用者ID」が発行され、オンライン申請システムの利用が可能に |
この「利用申出」は1回行えば原則として継続利用が可能ですが、担当者の異動などがあった場合は、IDの変更・削除などの対応も必要になるため、継続的な管理が重要です。
申請の流れを理解する
利用申出が完了すると、いよいよ実際の申請が可能になります。申請の基本的な流れは、従来の窓口申請と大きくは変わりませんが、オンライン上で完結するため、操作方法やシステムの仕様を理解しておく必要があります。
基本的な申請の流れ
- ログイン(企業の利用者IDでログイン)
- 申請書の作成(必要情報をフォームに入力)
- 添付書類のアップロード(PDF形式で提出)
- 内容確認後、送信
- 審査結果の通知を待つ
- 結果に応じて在留カード等の受領(郵送または窓口)
オンライン申請に必要な書類
オンライン申請を行う際は、申請の種類ごとに必要な書類が異なります。書類の不備や不足は申請の差し戻しや審査の遅れにつながるため、事前に必要書類を把握し、確実に準備しておくことが重要です。
ここでは、企業が関わる主な3つの申請手続きにおいて、提出が求められる主な書類を紹介します。
在留資格認定証明書交付申請の場合
この申請は、海外にいる外国人を日本に呼び寄せて就労を開始する際に必要な手続きです。採用活動の初期段階で発生するため、書類の準備も計画的に進める必要があります。
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 在留資格認定証明書交付申請書 | 申請者本人の情報および在留予定内容を記載 |
| 雇用契約書(または内定通知書) | 雇用条件や職務内容が確認できるもの |
| 会社概要資料 | 登記簿謄本、会社案内、Webサイトのプリントアウト等 |
| 履歴書・職務経歴書 | 採用予定者の経歴を示すもの |
| 学歴証明書 | 大学卒業証明書など(職務に関連する学歴がある場合) |
| 日本語能力証明書(任意) | 職務上日本語が必要な場合は提出推奨 |
在留資格変更許可申請の場合
たとえば「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への変更など、在留目的が変わる際に必要な手続きです。変更の妥当性を証明するための書類が求められます。
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 在留資格変更許可申請書 | 現在の在留資格と変更後の希望資格を記載 |
| 雇用契約書 | 職務内容や勤務条件を示すもの |
| 在留カード(写し) | 現在の在留資格を確認できるもの |
| 卒業証明書 | 学歴要件の確認に使用(大学等) |
| 成績証明書(任意) | 申請内容によっては求められることがある |
| 会社概要資料 | 認定証明書申請と同様の企業情報資料 |
在留期間更新許可申請の場合
現在の在留資格を維持したまま、在留期間だけを延長する場合に必要な手続きです。就労状況や雇用の継続を証明する資料が求められます。
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 在留期間更新許可申請書 | 現在の在留資格のまま、期間延長を希望する旨を記載 |
| 給与明細または源泉徴収票 | 安定的な収入があることの証明 |
| 雇用継続を示す資料 | 勤務証明書、契約書更新の写し等 |
| 在留カード(写し) | 現在の在留資格を確認するために必要 |
書類提出時の注意点
オンライン申請では、書類の提出方法にも独自のルールがあります。以下の点に注意して書類を準備・提出しましょう。- すべての書類を1つのPDFファイルにまとめる必要があります。書類が複数ある場合は、PDF化して1ファイルに統合してください。
- ファイルサイズに制限があります(例:10MB以下)。高解像度のスキャンや画像を含む場合は、圧縮などの調整が必要です。
- 外国語の書類には日本語訳の添付が求められることがあります。自社作成の翻訳でも可能ですが、正確性が重要です。
書類の不備は差し戻しの原因になり、結果として処理期間が長引く要因にもなります。申請前のチェックリスト作成や複数人による確認体制が有効です。
オンライン申請を導入する際の注意点
オンライン申請は非常に便利な制度ですが、運用にはいくつかの制約や注意点があります。制度を正しく理解し、社内での活用体制を整えることで、初めてその利便性を最大限に引き出すことができます。ここでは、企業として押さえておきたい6つのポイントを解説します。
対象手続きと申請時期を確認する
すべての申請がオンラインで対応できるわけではありません。制度上、対象外の手続きや在留資格が存在します。
- 短期滞在ビザなどはオンライン非対応
- 家族滞在など、一部の帯同者関連申請も対象外となる場合あり
また、在留期間の満了日が迫った申請についても、原則としてオンラインでは受け付けられず、窓口での申請が必要になります。更新や変更のタイミングを見計らって、余裕を持った申請スケジュールの設計が重要です。
書類の形式と提出ルールを守る
オンライン申請では、書類の提出形式にも厳格なルールがあります。形式違反があるとエラーで申請が進まないため、事前の確認が不可欠です。
- 提出できるのはPDF形式で1ファイルのみ
- ファイルサイズ制限(例:10MB)を超えるとアップロード不可
- 複数の書類は1つのPDFにまとめる必要がある
- スキャン時の解像度調整や圧縮も必要になる場合あり
書類準備の段階から、形式面の対応を想定したデータ管理やチェック体制を整えることが求められます。
IDと権限を安全に管理する
所属機関(企業)としてオンライン申請を行うには、「利用者ID」の発行が必要ですが、このIDやログイン情報の管理にも細心の注意が必要です。
- 利用者IDやパスワードの社内共有は原則NG
- 担当者の異動・退職時には、速やかにIDの削除・再発行手続きが必要
- アクセス履歴の管理、ID利用者の記録も重要
組織として、ID管理ルールや責任範囲を明確にし、属人化を防ぐ体制づくりがポイントです。
制度変更に対応できるようにする
オンライン申請制度は、今後も随時アップデートされる可能性があります。たとえば、2026年1月からは新たなシステムへの移行が予定されており、下記のような変更が含まれます。
- 利用者IDの有効期限が延長
- スマートフォンによる本人認証が導入
- 所属機関による定期報告義務が追加される可能性
制度の変更点は定期的に確認し、社内マニュアルの更新や説明会の実施など、柔軟な対応が求められます。
社内の申請フローを標準化する
申請担当者が変わってもスムーズに運用できるよう、社内でのフロー標準化が不可欠です。
- 申請業務のマニュアル作成
- 書類準備のチェックリストの整備
- 申請期限や進捗の一元管理システムの導入(カレンダー・共有ツール等)
属人化を防ぐことで、申請忘れや誤りのリスクを軽減し、安定した運用が可能になります。
外部専門家と連携して業務を分担する
すべての申請業務を社内で完結させる必要はありません。行政書士やビザ専門事務所との連携により、効率化やリスク低減が期待できます。
- 申請書類の作成・提出を専門家に委託
- 自社ではスケジュール管理や資料提供に集中
- 家族帯同や特殊なケースのみ外注、など柔軟な使い分けも有効
また、新制度への対応や法改正情報の提供など、外部の専門知識を活用することで、制度対応の質も高まります。
よくある質問(FAQ)
オンライン申請制度を導入・運用していく中で、企業の現場担当者から寄せられることの多い質問をまとめました。以下では、よくある3つのケースについてご紹介します。
申請できないケースは?
オンライン申請は便利な仕組みですが、すべての在留資格や手続きが対象となっているわけではありません。制度の範囲を理解しておかないと、「オンラインで進めようとしたら対象外だった」という事態にもなりかねません。
- 短期滞在や特定の家族滞在ビザなど、一部の在留資格はオンライン非対応です。
- 外国人本人による申請の場合、マイナンバーカードや電子証明書の未所持だと利用不可となります。
- 在留期間の満了直前に差し掛かった申請(ギリギリでの更新等)は、オンラインでは受付されず、窓口申請が必要です。
必ず申請前に、対象資格と手続きの可否を確認するようにしましょう。
資料の不備やファイルエラーが起きた場合は?
オンライン申請では、添付資料の形式やサイズ制限に厳しいルールがあります。エラーが発生した場合は、以下の項目をまず確認してください。
- ファイル形式がPDFであるかどうか(他形式はアップロード不可)
- ファイルサイズが規定内(例:10MB以下)かどうか
- 1ファイルに統合されているかどうか(複数ファイル不可)
- 書類の抜け・記載漏れ・スキャン不鮮明などの不備も要確認
万が一差し戻された場合も、再提出は可能ですが、審査が遅れる原因になるため、事前チェックの徹底が大切です。
担当者不在時の対応方法は?
企業内で申請業務を担う担当者が不在・退職・異動する場合、申請が滞るリスクがあります。オンライン申請ではID管理が必須のため、以下のような対応をあらかじめ準備しておくと安心です。
- 複数の担当者にIDを発行し、最低限のバックアップ体制を構築
- 代理申請ルールやマニュアルを整備し、誰でも引き継げる状態に
- IDやパスワードの保管・共有方法について、セキュリティポリシーを明確化
特に急な不在時でも、スムーズに申請を継続できるよう、体制づくりと定期的な見直しが重要です。
まとめ
在留資格のオンライン申請は、外国人材を受け入れる企業にとって、手続きの効率化と負担軽減につながる有用な制度です。24時間対応や進捗管理のしやすさなど、多くのメリットがありますが、対象外の手続きや書類形式の制限など、注意すべき点も少なくありません。
制度を正しく理解し、社内体制を整えたうえで運用することが、円滑な導入のカギとなります。必要に応じて専門家の支援も活用しながら、自社にとって最適な活用方法を検討しましょう。
