「特定技能1号で採用した外国人スタッフを、このまま長く雇い続けるにはどうすればいいだろうか…。」——企業の人事担当としてそのような悩みを抱えていませんか?
特定技能1号は在留期間の上限が通算5年のため、せっかく育てた人材も制度上の期限が来れば雇用継続が難しくなります。そこで注目されているのが、特定技能2号への移行です。
特定技能2号は、在留期限の上限がなく家族帯同も認められる在留資格で、外国人材の長期定着を実現できる制度です。2023年に対象分野が大幅に拡大されたことで、取得者数は急増しており、企業の関心も高まっています。一方で取得ハードルは高く、計画なしに進めると「5年が終わったのに要件を満たせなかった」という事態になりかねません。
本記事では、特定技能2号の制度概要から取得要件・対象分野・企業にとってのメリット・計画の立て方・実際の導入事例まで、行政書士の視点からわかりやすく解説します。
なぜ今、特定技能2号への注目が高まっているのか?
特定技能2号の取得者数が急速に伸びています。出入国在留管理庁の発表によると、2024年12月末時点では832名だった2号取得者が、2025年6月末時点では3,073名へと約3.7倍に増加しています。
この急増の背景には、2つの要因があります。1つ目は、制度の成熟です。特定技能1号は2019年にスタートした制度で、在留期間の上限は通算5年です。制度開始から5年以上が経過し、1号の在留期限に達する外国人が続々と生まれてきており、2号への移行が現実的な選択肢として浮上してきました。
2つ目は、対象分野の大幅な拡大です。2023年の閣議決定により、これまで建設・造船舶用工業の2分野のみだった特定技能2号の対象が11分野に一気に広がり、多くの業界で2号取得を目指せる環境が整いました。
加えて、日本全体の人手不足はますます深刻化しています。厚生労働省の調査によると、生産年齢人口の減少は今後も続く見通しであり、外国人材の長期定着・戦力化は、多くの企業にとって経営上の急務となっています。こうした背景が重なり、「1号で採用した人材を2号へ移行させ、長く活躍してもらう」という戦略への関心が急速に高まっているのです。
特定技能2号とは?制度の基本について
特定技能2号は、特定技能1号で一定の経験と技能を積んだ外国人材が、さらなるキャリアアップを果たすために取得できる在留資格です。
1号で培った技能と経験をさらに深め、現場のリーダー・指導者として活躍できる水準に達した外国人に与えられます。1号と2号では、在留条件や企業の管理負担など複数の点で大きく異なります。
特定技能1号と2号の主な違い
1号と2号の最大の違いは「在留期限の上限があるかどうか」です。1号は通算5年が上限ですが、2号は上限がなく、更新を繰り返すことで長期にわたって日本に在留し働き続けることができます。
そのほかの主な違いは以下の比較表のとおりです。
|
|
特定技能1号 |
特定技能2号 |
|
在留期限 |
通算5年まで(上限あり) |
上限なし(更新可) |
|
家族帯同 |
不可 |
可 |
|
登録支援機関 |
支援委託が必要(費用発生) |
支援義務なし(費用不要) |
|
永住権 |
対象外 |
要件を満たせば申請可能 |
|
対象分野 |
12分野 |
11分野(介護を除く) |
|
取得要件 |
特定技能1号評価試験または技能実習2号修了 |
2号評価試験合格+職歴要件(約2年の指導・管理経験) |
|
現場での役割 |
即戦力スタッフ |
指導・管理者(チームリーダー等) |
特に注目すべき点は、登録支援機関への委託が不要になることです。1号では外国人の生活支援・相談対応等を登録支援機関に委託する義務があり、1人あたり月額2〜3万円程度の費用が発生します。
2号ではこの支援義務がなくなるため、継続的なコスト削減につながります。また、安定的に就労・生活を続けることで永住権の申請要件を満たす可能性が開かれる点も、外国人本人にとって大きな魅力です。
対象となる11分野と介護が対象外の理由
特定技能2号は、2019年の制度開始当初は建設・造船舶用工業の2分野のみが対象でした。2023年の閣議決定により、対象分野が一気に11分野に拡大されています。現在の対象分野は以下のとおりです。
|
No. |
分野 |
主な業務内容 |
|
1 |
建設 |
建築・土木・ライフライン設備等の施工・管理 |
|
2 |
造船・舶用工業 |
溶接・塗装・機械加工・船体製造等 |
|
3 |
自動車整備 |
日常点検・定期点検・特定整備等 |
|
4 |
航空 |
空港グランドハンドリング・航空機整備等 |
|
5 |
宿泊 |
フロント・客室清掃・レストランサービス等 |
|
6 |
農業 |
耕種農業・畜産農業全般(栽培管理・収穫等) |
|
7 |
漁業 |
漁具操作・水産動植物の採捕・養殖管理等 |
|
8 |
飲食料品製造業 |
飲食料品の製造・加工・品質管理等 |
|
9 |
外食業 |
飲食物の調理・接客・店舗管理等 |
|
10 |
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業 |
機械金属加工・電気電子機器組立て・金属表面処理等 |
|
11 |
ビルクリーニング |
建物内部の清掃・衛生管理等 |
一点注意が必要なのは、特定技能の分野に「介護」が含まれますが、介護のみ2号が設けられていません。介護分野では、2号に相当するキャリアアップとして「介護福祉士」の国家資格を取得し、在留資格「介護」へ移行するという独自のルートが設けられています。
特定技能2号の取得要件
特定技能2号は、誰でも取得できる在留資格ではありません。ハードルは高く、2つの要件を同時に満たす必要があります。ギリギリになってから準備しても間に合わないケースが多く、1号として働き始めた早い段階から計画的に準備を進めることが不可欠です。
試験要件:2号評価試験への合格
特定技能2号の試験は、職種ごとに内容・難易度が異なります。外食業・飲食料品製造業では、これまで複数回試験が実施されており、現在の合格率は40〜50%程度で推移しています。
制度開始当初は30%程度でしたが、試験情報が広まるにつれて合格率は上昇傾向にあります。とはいえ、受験者の半数以上が不合格となる難易度であることに変わりはなく、計画的な試験対策が必要です。
試験は年間3回程度実施されます。特定技能1号の在留期間は通算5年のため、その期間中に何回受験できるかを逆算したうえで、いつから学習を始めるかを早めに本人と話し合っておくことが重要です。
また、試験の申込みは本人ではなく企業が代行するケースが多いため、申込み時期・手続きについても企業側が把握しておく必要があります。
職歴要件:指導・管理経験の証明
2つ目の要件が職歴要件です。特定技能1号として就労した5年間のうち、現場でスタッフを指導・管理する立場として約2年間の経験を積んでいることが条件となります。単に就労期間が長いだけでは不十分で、「誰かを指導した・管理した」という立場での実績が必要です。
この職歴要件は企業が証明する必要があります。申請時に企業が職歴要件証明書を発行し、提出しなければなりません。そのためには、1号採用時からチームリーダーや先輩スタッフとしての役割を意図的に付与し、指導・管理の実績を積み重ねていく仕組みを社内で設けることが必要です。
したがって、「3年目から考えればいい」という考えでは遅く、採用初年度から計画を立てることが2号取得成功の鍵となることを念頭に置くようにしましょう。
特定技能2号のメリット
特定技能2号への移行は、外国人本人と受け入れ企業の双方にとってメリットをもたらします。それぞれの視点から整理します。
外国人本人にとってのメリット
特定技能1号は在留期間の上限が通算5年ですが、2号になると上限がなくなり、更新を続けることで日本に長期にわたって滞在・就労することができます。さらに、1号では認められていない家族帯同も2号では可能となるため、配偶者・子どもと一緒に日本で生活基盤を築くことができます。
また、安定的に就労・納税を続けることで、永住権の申請要件を満たす可能性が開かれます。永住権取得はあくまでも条件を満たした場合の話であり保証されるものではありませんが、「日本で長く働き続けたい」「家族と一緒に日本で生活したい」という外国人にとって、2号は非常に魅力的なキャリアの到達点です。このキャリアパスの見通しを早い段階で本人に共有することは、職場への定着促進にも直結します。
企業にとってのメリット
企業にとっての最初のメリットはコスト削減です。特定技能1号では、外国人の生活支援・相談対応等を登録支援機関に委託する義務があり、1人あたり月額2〜3万円程度の費用が継続的に発生します。2号ではこの支援義務がなくなるため、委託費用がかからなくなります。長期雇用が前提となる2号では、このコスト差は年単位で積み重なっていきます。
次に、現場の指導・管理を任せられる人材として活用できることが挙げられます。2号の取得要件には指導・管理経験が含まれるため、2号取得者は現場をある程度任せられるリーダー的存在です。新たに入ってくる特定技能1号の外国人スタッフの育成を2号の人材に任せることができるため、外国人材の採用・育成が組織として回る好循環が生まれます。
特定技能2号取得に向けた企業の準備・計画の立て方
特定技能2号の取得に成功している企業に共通しているのは、1号採用の段階から計画を立てているという点です。試験要件・職歴要件のいずれも、5年という限られた期間の中で準備を進める必要があります。以下のキャリアパス計画表を参考に、早めの準備を始めてください。
キャリアパス計画表
1号採用初年度からの5年間の計画表は以下のとおりです。
|
時期 |
企業が行うこと |
外国人本人が行うこと |
|
1号採用初年度 (1年目) |
2号取得に向けたキャリアパスを本人と共有。職歴要件の逆算リストを作成する |
制度の仕組みを理解し、2号取得を目指す意思決定を行う |
|
1〜2年目 |
指導・管理のポジションを段階的に経験させる。チームリーダー等の役職を付与する |
先輩・後輩スタッフへの指導経験を積む。2号試験の概要を把握する |
|
3〜4年目 |
職歴要件(約2年の指導・管理経験)の証明書類を整備する。試験の申込みを代行する |
2号評価試験の受験勉強を開始。年3回の試験機会を逆算して学習計画を立てる |
|
5年目 (1号終了前) |
職歴要件証明書の最終確認と2号申請の準備 |
2号評価試験に合格し、2号への移行申請を行う |
計画を立てる際のポイント
重要なのは、ゴールから逆算してスケジュールを組むことです。「この人の1号期間はいつ終わるのか」「職歴要件を満たすためにはいつから指導・管理ポジションに就かせればよいか」「試験は何回受けられるか、いつから勉強を始めれば間に合うか」を逆算してリスト化することが出発点になります。
次に、キャリアパスを本人に早期に共有することも重要です。「5年後に2号を目指せる」という見通しを持つことで、外国人本人の仕事へのモチベーションと職場への定着意欲が高まります。2号取得というゴールを企業と本人が共有しながら進む関係性をつくることが、長期雇用の成功につながります。
また、試験対策については企業としてのサポートが欠かせません。試験は簡単ではなく、本人任せにしていては合格率は上がりません。通訳を交えた学習サポートや、受験申込みの代行など、企業が積極的に関与することが成功の鍵となります。
導入事例:特定技能2号の移行で現場はどう変わったか
実際に特定技能2号の移行を果たした企業では、現場にどのような変化が生まれているのでしょうか。業種ごとの事例をもとに紹介します。
飲食業:「この人がいるから来る」という常連客が生まれた
外食業で2号移行を果たしたあるスタッフは、店舗をある程度任せられる存在となり、そのスタッフ目当てで来店する常連客が増えたという事例があります。接客・調理の技能はもちろん、スタッフへの指示や店舗運営を主体的に担えるようになったことが、店舗全体のサービス品質の向上につながった好例です。
また、2号取得者が地域に長く住み続けることで、近隣との良好な関係を築き、地域コミュニティへの溶け込みが進んでいるという声も聞かれます。家族と暮らしながら安定した生活基盤を持つことが、仕事への責任感と定着率の向上にもつながっています。
農業:後輩育成を任せることで管理者が本来の業務に集中できた
農業分野でも、2号取得者が後輩スタッフの育成を担えるようになった事例があります。これまで管理者が担っていた新人の指導・教育を2号の人材に任せることができるようになり、管理者が本来の農場運営や生産計画といった業務に集中できる好循環が生まれています。
この事例が示すのは、2号人材の登用が単なる「外国人のキャリアアップ」にとどまらず、組織全体の業務効率化と人材育成の仕組み化につながるという点です。外国人材の活用を長期視点で設計することで、企業全体の競争力向上に直結します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 特定技能1号から2号へは全員が移行できますか?
全員が移行できるわけではありません。2号への移行には「2号評価試験への合格」と「約2年間の指導・管理経験(職歴要件)」の2つの要件をどちらも満たす必要があります。合格率が40〜50%程度の試験であるため、計画的な準備が必要です。
Q2. 特定技能2号の試験はどこで受けられますか?
試験の実施場所・日程は職種・分野によって異なります。年間3回程度実施される分野が多く、試験の申込みは本人ではなく企業が代行するケースが一般的です。最新の試験情報は各分野の試験実施機関のウェブサイトをご確認ください。
Q3. 企業が職歴要件の証明書を発行できない場合はどうなりますか?
職歴要件を証明できない場合、2号への移行申請ができません。職歴要件は企業が意図的に「指導・管理の役割」を付与し実績を積ませていく必要があるため、採用初年度から計画的にポジションを設計することが重要です。
Q4. 特定技能2号になると登録支援機関との契約は終了しますか?
はい、特定技能2号では登録支援機関による支援義務がなくなります。そのため、1号の段階で委託していた登録支援機関との契約は、2号移行を機に終了することが一般的です。これにより月額の委託費用が不要になります。
Q5. 特定技能2号から永住権を取得できますか?
永住権の取得が可能になる場合があります。永住権の申請には「10年以上の在留」「素行が善良であること」「独立した生計を営む資産・技能があること」などの要件があります。
特定技能2号は在留期限の上限がないため、これらの要件を満たしていけば申請の対象となり得ます。ただし必ずしも取得できることを保証するものではありません。
まとめ:特定技能2号は「早めの計画」が成否を分ける
特定技能2号は、在留期限の上限なし・家族帯同可・登録支援機関の委託費用不要という、企業と外国人双方にとってメリットの大きい在留資格です。2023年の分野拡大を経て取得者数は急増しており、今後さらに重要度が増すことは間違いないでしょう。
しかし、試験合格率40〜50%という難易度と、約2年の指導・管理経験が必要な職歴要件があるため、思いついたときに準備を始めても間に合わないケースも少なくありません。1号として採用した初年度から逆算計画を立て、本人と企業が一体となって準備を進めることが、2号取得成功の絶対条件です。
「うちの特定技能1号を2号に移行させたい」「何から始めればよいかわからない」という方は、さむらい行政書士法人までお気軽にご相談ください。外国人就労に精通した行政書士が、貴社の状況に合わせた計画づくりをサポートいたします。初回相談は無料で承っております。
